「肥満」という言葉は軽蔑の意を感じさせるという理由から、英国国立医療技術評価機構(NICE)は、医療関係者らに対し「肥満」と言葉を使わないよう指導する通達を行った……という記事を見たんだけどさ。
外国の例だから直接の影響は無いかもしれないけど、こうやって無難な表現に言い換える風潮ってどうなの。肥満は肥満であり、それ以上でも以下でもないのに、なぜわざわざ言い換える必要があるのか。というか「肥満」のどこに軽蔑の意が込められてるんだろう。百歩譲って「デブ」ならわからないでもないのですが。しかも、好ましい表現は「より健康的な数値に体重を落とす必要のある人」と、やたら回りくどい官僚的な言い回しが推奨されてるらしい。
この流れだと、そのうち「ハゲ」も差別用語として言い換えられるかも。「頭髪の本数が他人より少ない人」とか。チビだったら「身長が平均よりも著しく低い人」か。うわー、余計に嫌みったらしく聞こえる。デブとかハゲとかチビとかのほうが愛着がわいていいと思うんだけど、どう感じるかは人それぞれなんでしょうか。
「お前の母ちゃんデベソ!」という言葉も、「デベソ」が好ましくないため「お前の母ちゃんヘソの面積が他人よりも若干広い人!」と言い換えなきゃならず、いったい何を言いたいのかわからないフレーズになってしまう。まあ実際にこの言葉を使ってる人を見たことはないのですが、これだけ言葉狩りが進むとこういった部分にも影響が出るはずだ。
「包茎」とか「短小」とか、こっちのほうがよっぽど軽蔑の意があると思うけど、これらもどうせなら言い換えればいいのに。「皮がお余りになっている人」と「長さが物足りないと感じさせるおそれのある人」でどうですか。こう柔らかい言い方をすればショックも少ないんじゃないかね。いずれにしても言われたら落ち込むだろうけど。
「変態」なんかも侮蔑語ですから、SMクラブの女王様は「この変態!」改め「この特殊な性的嗜好をお持ちの人!」と言葉責めしなければならない。こうなるとプレイのムードが台無しだな!
話が飛びすぎたところで。何だっけ。ああ、肥満がどうたらでしたっけ。とにかく僕は安易な言い換えが嫌いだ。嫌いなんだけど、使わざるを得ない場合があるのは確かなので、せめて物事の本質からは目を逸らさないようにしよう。ということで、今日もご訪問くださったひまな読者様ありがとうございました。
あっ、「ひまな読者様」だと軽蔑した感があるから、「時間を有効活用するスキルに難のある人」に言い換えます。やっぱ、当たり障りのない表現をしておくのが無難なので……。