2010年3月3日水曜日

サラリーマン川柳(笑)

毎年、保険会社が企画している「サラリーマン川柳」をご存じですか。世のお父さんたちには受けがよく、昨年の作品であれば、「しゅうち心 なくした妻は ポーニョポニョ」「ひさしぶり ハローワークで 同窓会」「ぼくの嫁 国産なのに 毒がある」がベストスリーだそうです。でもあれ、まったく笑えないんだけど……。

「シャレにならないから笑えないよ」ではなく、「全然おもしろくないから笑えないよ」です。いや、まじで、どこにどうおもしろさを感じればよいのか途方に暮れます。むしろ嫌悪感が先に立つのは否めない。

笑いどころなんて人それぞれだから、「どこがおもしろいの?」って疑問を呈するのはヤボなんだろうけど、例によって「なぜ世間ではおもしろいとされているのか」を考察(という名の妄想)してみよう。

確かに「うまいこと言ってるなぁ」と感心はします。でも笑えない。どうしても寒い。

「このオレに あたたかいのは 便座だけ」
「減っていく ボーナス・年金 髪・愛情」
「昼食は 妻がセレブで 俺セルフ」

過去の作品からは、「家族のためがんばって働いてるのに、妻にも娘にもけむたがられるサラリーマン」を演じて自虐する傾向が見て取れます。しかも、「今どきこんなオヤジいるのか?」と突っ込まざるを得ない古典的なサラリーマン像。仕事帰りに屋台で一杯ひっかけて寿司折りを持って千鳥足での帰宅途中に立ちションしてたら自転車に乗ったおまわりさんに注意されちゃうような、そんなステレオタイプなオヤジです。

寒く感じる理由はこのあたりですかね。自虐が寒いのと、視点がやたら古風なのが寒いのと、あとは、皮肉は皮肉だけど健全なラインを守ってるのがあざとく見えて寒いのかな、たぶん……。

いつも通り憶測で結論付けてみます。ステレオタイプな像の自虐が受けるのがサラリーマン川柳なのだけど、僕から見るとあまりにも卑屈すぎて気持ち悪いから嫌いだ……これでどうでしょうか。今はまったくおもしろく感じないけど、今後、サラリーマン川柳で笑えるときがくれば、それは自分が年をとったってことでしょう。願わくは、そんな日が来ないことを祈ります。

さて、結論が出たところで話を変えて、「サラリーマン川柳」ならぬ「独身川柳」なんてどうでしょうか。じつは最近、川柳に触れる機会があって、川柳って意外におもしろいな~と思ってる次第です。テーマを自分で決めるのはどうかと思いますが、細かいことは置いといてここで一句。

「女の子 話しかけても 逃げられる」
「『非婚派だ!』 でも本当は 妻ほしい」
「左手と 愛し合うのは もうあきた」

いかがですか。「強がってても、じつは彼女がほしいし結婚もしたいんです。でも女の子に相手にされなくてさみしーっ!」という、これもステレオタイプな独身男性を演じてみました。女性を持ち上げるような感じで。

「『子はいいよ♪』 言ってる彼が こわい~よ」
「守りたい あいつは嫁を オレ金を」
「スイーツや つわものどもが 夢のあと」

既婚者や女性を皮肉の対象として、「独身最高!」なノリで本音を書くと微妙ですね。やっぱり、サラリーマン川柳と同じくステレオタイプな独身像を前面に出すのが無難でしょうか。しかし、自分で考えて自分で批評するだなんて、いくら僕が一人遊び好きとは言え、むなしさの極致ではないだろうか……。まあいいけど。

いずれにしても、川柳ってそもそも「ゲラゲラ笑えるほどおもしろい」ものではなく、「クスッと鼻で笑う」程度のものではないかと疑念がもたげてきました。「これめっちゃおもしろいじゃん!」と腹をかかえて笑える川柳、どなたかご存じでしたら教えてください。って、そういや、こういうのが得意な先輩がいました。何せ彼は「元ハガキ職人」だからねえ。

そんな彼に、「サラリーマン川柳っておもしろくないですよね?」と聞いてみたら、「いや、おもしろい」と想定外の答えが返ってきたところで終わります。うーん、サラリーマン川柳って奥深い。